久しぶりにいい映画を観た。映画館で映画を見るのは何年ぶりだろう。
昨日封切になったばかりの「シリアの花嫁」、神保町の岩波ホール。行ってみたらなんとも小さな劇場だったが、久しぶりにいい映画館の雰囲気だ。
重い腰を上げて映画館に行こうと思ったのは、自分の生まれた国を舞台にしているということもあるけれど、ニュースなどでしばしば取り上げられるイスラエルに占領されたゴラン高原、分断された家族が拡声器で連絡を取り合っている、まさにその場所を舞台にした映画であることに興味を覚えたからだった。
この地に住む人々は、なんと無国籍である。主人公のモナもそんな無国籍人の一人。結婚を機に境界を越えてシリア側に行く。一度境界を越えてしまったら、国交がないため二度と戻れない、すなわち結婚は家族との離別でもあるのだ。映画は淡々とその結婚式の一日を描いていく。
しかし、単純にシリアとイスラエルの関係だけで描かれているのではない。海外に渡った兄弟やその嫁のロシア人、国連のフランス人、と様々なな文化的背景の人々が登場しアラビア語、英語、ロシア語、ヘブライ語が飛び交う。その分だけ境界があるのである。また、境界は地理的、文化的なものだけではなく、新と旧、世代の中にもまたあるのである。境界は、時に対立を生み、それを乗り越えて融和も生まれる。
考えれば考えるほど、深い見方ができる映画で、限られた時間に様々な要素を入れ込めたなと思う。それだけスクリプトがしっかりしているということだろう。
国境上でのやり取りはコミカルですらあり、それは人間の生活を身勝手な都合で分断してしまう国家というものに対する風刺でもあったりする。ここら辺は、同じ国境上のやり取りを描いた映画「ノーマンズランド」にも通じるところがある。もっとも「ノーマンズランド」は、無力な国連に対する皮肉が強かった記憶があるけれど。
日本にいると、こうした信じられないような境遇にある人々がいることを忘れてしまう。
昨年シリアに行ったときに、ダマスカスで夕涼みをしていると、声をかけて来たのはみなクルド人であった。ゴラン高原の人たちとはまた違うけれど、彼らもまた国境に分断され、不安定な境遇にある人々で、それだけに外国人と話すことで、その境遇を世界に対してアピールしたいようであった。
製作は、イスラエル、フランス、ドイツの合作。監督はイスラエル人である。シリア側の立場で見れば、最後に寛容さをイスラエル側がみせた様に描いているところが、納得できないところかもしれないが、イスラエルの狡猾さも描いているし、それなりにフェアに描かれていると思う。
国際的にも多くの賞を取っているこの映画が、日本で本格上映されるまで約5年もかかったとはいったいどういうことだろう。
映画全体を通して、人々に対する暖かい視線、人間に対する信頼を棄てきっていない、ささやかな希望のようなものを感じた。
カリーマ先生がコメントしている動画
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映画「シリアの花嫁」~境界線と闘う、姉妹の家族愛【レイバーネット】
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Trackback by どこへ行く、日本。(安倍、福田と二連続投げ出しの後は麻生が継いだ。投げ出す間 — 2009/2/23 Monday @ 8:33:09
「シリアの花嫁」
「シリアの花嫁」試写会 サイエンスホールで鑑賞
これは珍しいイスラエル制作(イスラエル、フランス、ドイツ共同制作)の作品。
テーマの目の付けどころが外国人では難しいとこ…
Trackback by てんびんthe LIFE — 2009/2/23 Monday @ 22:23:03
シリアの花嫁
ハリウッドで製作される中東を舞台にした作品はよくありますが、これは今最も注目を集めている国・イスラエルが占領し続けているゴラン高原に住むとある家族の物語です。主演ヒアム…
Trackback by LOVE Cinemas 調布 — 2009/3/3 Tuesday @ 16:56:10
シリアの花嫁
シリアの花嫁 HP
http://www.bitters.co.jp/hanayome/
すばらしい映画!
最高の名画の一つに数えたいと思う。
「境界」という人間が作ったものに翻弄されながらも、強い意志で、一
Trackback by Art- Mill — 2009/3/8 Sunday @ 23:48:23
「シリアの花嫁」
岩波ホールで「シリアの花嫁」を見る。
雰囲気がよく、そこそこ泣かせるシーンもあるが、全体としてはまぁまぁで、オチはダメだ、というの…
Trackback by 汐見の季節 — 2009/3/28 Saturday @ 11:12:05
今日、この映画を見てきました。めっちゃ面白かったです。世界観が変わりました。
Comment by ゆたぽん — 2009/4/11 Saturday @ 22:00:48
「シリアの花嫁」国境ゲートは花嫁が願うも開かない
「シリアの花嫁」★★★
ヒアム・アッバス 、マクラム・クーリー 、クララ・クーリー 主演
エラン・リクリス 監督、2004年、97分、イスラエル、 ドイツ、フランス
「旧シリア領…
Trackback by soramove — 2009/5/20 Wednesday @ 7:35:34
シリアの花嫁■人間は、無益な対立をいくつ生み出そうというのか
イスラエル占の領下ゴラン高原のある村からシリアへ一人の女性が嫁いで行こうとする。物語の核はこれだけであるが、この映画はたったこれだけのことから人間の持つ罪深さを描き出す…
Trackback by 映画と出会う・世界が変わる — 2009/8/27 Thursday @ 8:59:38