バングラデシュから一通のメールが届いた。9月にインド国境に向かうバスで隣り合わせた少年からだった。
彼のことは忘れもしない。何故なら、僕と同じ名前だったからだ。僕の名前は、アラビア語とダブルミーニングだから、イスラム国であるこの国で、同じ名前の人に会うのは意外ではないが、アラブでは女性の名前ということなので、相手が少年なのが意外だった。
少し年の離れたお姉さん(結構美人!)と、1,2才年上のお兄さんと、お母さんとバスに乗り込んできて、僕の隣に座った。なかなか聡明そうな顔をした少年で、きれいな英語を話す。英語が通じるとわかると、いざ実践のとばかりに矢継ぎ早にいろいろな質問をしてきた。
「どこから来たの?」
「どこへ行くの?」
「宗教は?」
「名前は?」
名前を聞いたところで、同じ名前なのでお互い驚いてしまった。
ひとしきり質問が終われど、バスは走り続ける。もてあました時間は、こういうときのために持参している折り紙で折り鶴を教えてあげることにした。折り始めると、周りの大人たちも興味深げに除きこむ。折鶴の最後のプゥーと空気を入れるところは象徴的で、子供に受けがいい。最初はなかなか上手くいかないけれど、センのいい子はすぐ覚えてしまう。周りの大人は英語をしゃべれないから、彼がいっぱしの口調で通訳をしたりする。
バングラデシュでは、とりわけ大学生がよく話しかけてきた。みな親切で礼儀正しく、時に食事に招待してくれたり、飲み物を奢ってくれた。バングラデシュは世界でも腐敗した政治で有名だけれど、彼らは自分達の国に誇りを持ち、海外に勉強しに行く夢、この国のために貢献する夢を語ってくれた。日本でいうと明治維新の若者のような感じかもしれないと思った。今のわれわれと違うのは、自分達がこの国を背負っていくのだという主体性があることだろう。
この少年も、きっとこの国を変えていく、そう思いながら、メールに返信を書いたのだった。